壁に囲まれた縁側

昔、祖父母宅の横に、曾祖父母の住んでいた家がありました

縁側のある古い民家だったと思います

その家が僕の記憶によると、地面よりも下に建っていました

プリンの容器の底に、家が建っているイメージです

もともと家が建っていた周りに土を盛ったのか、

地面を掘って家を建てたのかはわかりません

 

印象に残っているのは、縁側の目の前に壁があってとっても暗かったこと

そして、家の奥は真っ暗だったことです

今思えば、縁側が塀に囲まれていただけかもしれません

それを、地面の下に家が建っていたと勘違いしていた可能性はあります

印象は強いのですが、記憶は曖昧なので

 

家の内部は、家具などはなく、畳が広がっていました

もう誰かが生活する場所ではなかったのだと思います

後年、取り壊されてしまったので、祖父母も持て余していたのでしょう

涼しくて静かで暗くて、ちょっとした秘密基地のようでした

薄暗い縁側で寝転んで、本を読んだり家の奥をぼんやり見つめていた記憶があります

 

薄暗いというのは大事です

光が射さない場所には、よくわからないものがいます

お化けの話をしているわけではありません

「あそこの暗いとこ、何かいそうじゃない?見に行かへん?」

「いやや、何かいたら怖いやん!」

こういう時の、いそうでいない、確認していないから結局わからないまま、

そういう意味での、余白というか、確認できることの外にあるものというか、

見たいけど見たくない、そういうわからないものです

 

はっきり見えるものが見えているとは限りませんし、真っ暗だと何も見えません

指の間から怖々と覗き込む、薄眼でぼんやりと見る、顔をそらして視界の端で捉える

小さい頃は、そういうことが自然に出来ていたように思います

今は、怖くて目を瞑るでしょう

それでも、たまにこの家が夢に出てくると、何だか安心してしまいます

 

2017.7.15