それはたぶん知る必要のないこと

 目覚めることが浮上だとするならば、眠りはどこへ落ちていくのだろうか。

 

 夢の中へ、と言いたくなるところではあるけれど、個人的に夢は見るものであって、落ちていくものではないと思っている。

 

 難しく考える必要などなくて、素直に眠りの中へ落ちていくと考えればいいのだろう。それでも、穴に落ちるように眠りに落ちると言われると、どうしても違和感がある。

 

 寝落ちという言葉があるけれど、何か作業中に居眠りしてしまって、例えば頬杖ついていたのが外れて、はっと目覚めたときに「寝落ち」していたと言うならば、わからないではない。でも、この場合は落ちて眠ったのではなく、物理的に頭が落ちて目覚めているのだから、どうも順序が逆ではないのか。

 

 布団の上で眠るときだって、落ちるというよりかは、どちらかと言うと眠りに沈んでいくというのが個人的な実感だ。

 

 最初の話に戻すと、眠りによって私たちが向かう場所、それがどこなのかが気になっている。意識を失うということで考えるならば、それは死と言っていいのかもしれないが、行って戻れる死なんていうのも、どうも格好がつかない。

 

 かといって、眠るように死にたいというわけでもなく、出来ればいつだってまた目覚めたいと思っているわけだ。

 

 もしくは、死ぬと言うことは夢から永遠に覚めないということなのかもしれない。永遠にいるかもしれない場所について、僕はあまりにも何も知らないが、それはたぶん知る必要のないことだろう。