橋の上でたむろする

久しぶりに自転車に乗って遠出をしていると、橋でカラスがたむろしているのに出会った。よくゴミの日なんかに電柱に集まって獲物を狙っているのは見かけるけど、特に彼らにとって何もないような場所に集まっているのが新鮮に感じた。人間で考えれば別におか…

そういう形の穴が空いていた

名前も思い出せない歌、いつか嗅いだ花の香り、作り手のいない料理、膝上の猫の暖かさ、日々現れては消える心の機敏。 何かが無くなったものだと気がつくために、私たちはあったはずのものがなくなる経験を必要としている。当たり前の話かもしれない。 心に…

パッチンガムと世界平和

パッチンガムなんてものがあった。 差し出されたらガムを引き抜くと、優しいネズミ捕りみたいなのに指を挟まれるオモチャだ。 一時、とても流行ったような記憶があるが、身内だけで報復し合っていただけかもしれない。 悪戯なんてものを久しくしていない。相…

カレー焼きそばと自由の行使

上着が一枚減った分だけシュッとしたかと言うと、そもそも昨日カレー焼きそばを食べ過ぎたのだ。 やっと春らしくなってきたような気もするが、冬物をしまうのはまだ時期尚早な予感もある。当たり前のことではあるのだけど、天候の変化に備えることは出来ても…

それはたぶん知る必要のないこと

目覚めることが浮上だとするならば、眠りはどこへ落ちていくのだろうか。 夢の中へ、と言いたくなるところではあるけれど、個人的に夢は見るものであって、落ちていくものではないと思っている。 難しく考える必要などなくて、素直に眠りの中へ落ちていくと…

ステップは可愛いが、ボールはホラーか

烏のステップが好きだ。 烏自体も好きは好きなのだけど、あの地面をピョコ、ピョコと跳ねる感じが堪らなく可愛い。 スキップ鬼なんて遊びがあったけど、人間がピョコピョコしていても特に可愛いとは思わないのは、サイズ感が違うからだろうか? そう考えると…

勝手に珈琲豆を贈る

珈琲の焙煎を始めて半年くらい経つので、一度覚え書きを残しておこうと思う。 まず、慣れてきて思うのは、珈琲豆を焙煎するときは、焙煎自体よりもハンドピックの方が個人的には大変だと言うこと。体系的にどこかで習ったわけではないので、まずどの豆を避け…

明らかに間違っている桜

私の記憶に残ってはいるが、それが現実のものではないとうすうす気がついている時、特に真偽を確かめる必要性もなく、時間だけが過ぎていって、よくわからない何かになることがある。 それは、最初に起こった出来事とはもちろん異なっている。かといってすべ…

忘れ物の眼差し

忘れ物が目立つようになった。 これは私の忘れ物というわけではなく、他人の忘れ物を目にする機会が増えた、ということなのだけど、自分で気づいていないだけで、実はたくさんのものを忘れている可能性はある。 可能性はある、というより事実たくさんのこと…

読書の手前

本を読まない人が増えたとは聞くけど、本が読めない人が増えたとはあまり聞かない。 巷の書店で売っているブックガイドや読書術の類は、すでに本が読める人のためのものであって、本が読めない人のためにはならないだろう。問題はもっと手前の地点にあるから…

生活が僕を歌っている

冷蔵庫を開けた。 卵ワンパック(残6個)、牛乳(残4分の1)、3日前に切った人参(1本分)、昨日切った茄子(1本分)、納豆ワンパック(残1)、絹豆腐ワンパック(残1)、もずく酢ワンパック(残3)、合わせ味噌ペットボトル式(半量)、めんつゆ(8割)、ポン酢小(…

自分で拾うために捨てられた言葉

好きなことを書けばいい、ということは簡単ですが、実際に何もかも自由に書こうとしても、僕の場合は何も書くことができません。何度か日記でも書いていますが、特に書きたいことというのがないのです。それでは、今書いているような文章をなぜ書いているの…

考えるな!チキンカレーを食え!

抽象的な思考ばかりしていると、目の前にある具体的な物の姿が見えなくなってしまう。別にそれが悪いことだと言いたいわけではないのだけれど、具体的な物の姿が見えなくなってしまうと、それを考えている者の姿もどこかぼやけてくるような気がする。 もちろ…

誰でもないだれかのために、どうか道にパンくずを

思い出というものが、自分の内に含まれているものでないのだとしたら、果たして私はどこから何を思い出していて、この思い出とはいったい誰の記憶なのか。 私の記憶というものは、思い出にとってみれば欠くことのできない要素であるような気がします。実際そ…

再び意味付けよと叫ぶ声の行方は

何かに呼びかけられた気がするときというのがあります。 自分の名前が呼ばれたわけではないので、あくまでも気がするというだけですが、まあそういうときは大体気のせいなので、いちいちそういうものに愚直に返事をするわけにはいきません。 ただ、それでも…

名前のないものに呼びかける

名前がわからないものに呼びかけるにはどうすればいいのでしょうか。それが近くにいるものなら、近づいていって「こんにちは」とでもいえばいいのでしょうが、どこにいるのかがわからなければもうお手上げですね。 そもそも、名前がわからないのにそれに呼び…

たとえ嘘でも、それが夢ならば

嘘がすべて暴き立てられ、本当しか存在しなくなった焼け野原のような世界で、一体誰が夢を見るというのだろうか。 たとえ嘘でもいいから、それが夢であるならば、それでも見ていたいという人だっているだろう。 みんな嘘が下手になってしまった。 みんな夢を…

読めていなくても、目は見ている

何かの文章を読んでいて、最後まで読んでもよくわからなかった、ということがあります。ただ、そういうときでも、最初から最後まで書かれていることが全くわからない、ということはありません(その場合は、わからないというよりは、読めないといったほうが適…

スターエッグ(1)

半年前に始まった体育館横の工事。どうも規模がおかしい。 学校の施設が新しく建設されるらしいが、手当たり次第に聞いて回っても、詳しいことを誰も知らなかった。先生に聞いても一様に首を振る。まさか誰も知らないということはないだろうに。 しかし、世…

イカアイス(終)

一寸先も見えない闇だ。 厨房の奥らしきところから、歯医者のドリルのような、甲高い音が聞こえてくる。 一体何が起きているのだろう。イカのアイスなど最早どうでもよかった。が、それこそ後の祭りだ。退路はすでに断たれている。 「ちょっと、袖をつまんで…

イカアイス(2)

「いらっしゃい!」 薄暗い店内に足を踏み入れると、景気のいい兄ちゃんの声が響いた。 内心びっくりしながら、そっと引き戸を閉める。外から見たら定食屋だったけど、中から見ても定食屋だった。しかも、異様に暗いと思ったら、電気がついていない。店の奥…

イカアイス(1)

何か違和感を感じながら教室の扉を開けると、案の定中は空っぽだった。 移動教室、ではないだろう。時刻は9時。HRはとっくに終わっているが、もしそうなら、移動中の級友とすれ違わないのはおかしい。 「もしかして、今日休みちゃうん。あほくさ。」 運命…

私の時間、言葉の時間(Ⅱ)

私の時間というのはなんなのでしょうか。それは今まで生きてきたすべての時間(=私の過去)を指すこともあるでしょうし、まさに今このとき、常に流れている今を指して、私の時間ということもあるでしょう。 この時間というのは、人それぞれ全く違うように思え…

私の時間、言葉の時間(Ⅰ)

とある文章を読んでいて、自分の読み方が言葉の示している速さを追い越しているな、と感じて以来、私と言葉の時間について考えています。書こうとしてみても、あまりにも書けないので、なにがそんなに書けないのかを書こうとしていますが、たぶん、何も言え…

溶けだしたものが 染み込んで ぐしゅぐしゅたてる 音が聞こえる 眩しくて 浮かぶ身体が膨らんで 悲鳴をあげた午後は暗い いつまでもこうしていたいと 雨の中で君が探す傘は 黒から青へと移りゆく ほどけたさびしさよ 一番きれいなのは君だ

わからないから、川に向かって叫ぶんや

相も変わらず、わからないことが多い世の中ですね。皆様は無事にお過ごしでしょうか。無事であれば結構、無事でなくてもそれはそれで結構、そんなことには頓着せずに、季節は春を迎えようとしているようです。それは少し寂しいことではありますが、その寂し…

今すぐ言葉にしたくて、石に躓いて泣いた

今すぐ何かを言葉にしたいときというのがあります。そういうときは、その何かを書こうとするわけですが、それがどんなものなのかは私自身わかっていないので、書いてみることでその形や感触をわかろうとするわけです。だから、書いているものが何かわからな…

しずかな時 リズムを刻む心音 青いい影ひとつ 自身に問う その荷を背負い その荷を運んでゆくか 忘れられ ただそこにあったのだ 決して戻らぬ 彼方へ向かう憧憬が 道におかれた物へ 眼差しをむける人 道におかれた声へ 耳をかたむける人 おまえの言葉に 夢は…

一度も見なかった夢を、私ではない誰かが思い出す

私が一度も見なかった夢を思い出すのは、私ではないのかもしれない。そんな考えが頭をよぎりました。言葉にすると、当たり前のことかもしれません。別に、その誰かは誰だっていいです。人間でもいいし、宇宙人でもいいし、猫でも犬でも鳥でも、石ころでもい…

殴られに行くと当然のように痛いけど、そこでUFOと邂逅する

本を読むことについて考えています。 読書をするということは、その語り手に殴られに行っているのではないか、と思うときがあります。もちろん、著者が人を殴ろうと思って語っているわけではありません(そういう著者もいるでしょうが)。あくまでも、私が殴ら…