紫色の夕焼け、逆さまの椅子

 教室掃除。ホームルームの後、机の上に椅子を乗せて、それを後ろに下げてまとめておいて、床を箒で掃いてちりとりでゴミを取り、また机を元の位置に戻す。学校がある限り毎日していました。ゴミを捨てに行くのがまた面倒です。小学校の時はまだ焼却炉なんてものがありましたが、いつの間にかなくなっていました。特別教室なんてものもあって、音楽室や美術室、理科室や視聴覚室なんていうのもありましたね。

 ある記憶を思い出す。それは、見ることなのか聞くことなのか。

 音に関する記憶と言うのはあまり残っていません。風景や人物は、ぼやけた写真のように保存されています。それも、随分と歯抜けになっているので、それが正しい絵であるのかどうかの確証はありません。それでも、忘れられない、いつまでも記憶に残っている、そんな風景の断片があります。しかし、なぜその記憶が残っているのか僕は知らない。物語はなく、偶然に記憶されてしまった景色があり、いつかそういうもので、僕の頭は埋め尽くされていくのでしょう。それも悪くないと思います。

 学校の授業が終わった後、部活に向かう冷えた廊下。ガラガラと扉を開けると、絵の具や使い古された木の匂いがする教室。逆さまに積まれた椅子は、今日は部活動がないことを知らせている。ふと窓を見ると、曇り空に夕焼けが覗いていて、運動場を紫色に染めていた。

 そういう景色をふと思い出して、急に元気をもらう時があります。