残影

書くなといわれ

わたしは書いた

手の届く広さで

微かな音を聞く

手放したのは言葉

吹き抜けたのも言葉

開いたてのひらを

じっと見つめ

その痕跡を

いつかの景色

いつかの声

思い出せ

忘れるために

刻み込め

手放さないため

わたしを見ている

あなたのために

残された影をひとつ