残影

書くなといわれ わたしは書いた 手の届く広さで 微かな音を聞く 手放したのは言葉 吹き抜けたのも言葉 開いたてのひらを じっと見つめ その痕跡を いつかの景色 いつかの声 思い出せ 忘れるために 刻み込め 手放さないため わたしを見ている あなたのために …

覚めない夢、どん底としての今

永井均さんという哲学者の本に『私・今・そして神』というものがあります。その中に、夢を思い出すことについて書かれた箇所があるのですが、そこを読んでいて、一度も見ていない夢を思い出すことについて書きたくなったので、少し長くなりますが引用してみ…

言葉の旅人、しかし三流

もともと、私は何か書きたいことがあって書くということがない人間です。じゃあ何故書いているのかというと、たんに書かずにいられないので書いているというだけで、何か主張したいことがあるわけではありません。どちらかといえば、書くこと自体が目的で、…

ぼんやりしていたことに はっと 気がついた ここはどこだろう どれぐらい こうしていたのか 目が覚めると 知らないところにいて 知らないひとたちと 知らないことをしている あれ 次はなにをするのだろう 何もわからず わからなくて 焦りが 世界を白くする …

言葉

言葉に助けられ 言葉に支えられ ここまで歩いてきた ずっと探している言葉 わたしだけの言葉 どれだけの言葉を写せば わたしの言葉を見つけられるのか 言葉は訪れ去っていく 内から湧き出る言葉など 何一つとしてないわたしに 誰かが訪れ去っていく (待って…

わからないだけで書く

何かを書こうとしているとき、何を書こうとしているのか、僕自身よくわかっていません。そもそも書きたいことなんて特にないのです。誰かに見られたところで、良くも悪くも何の影響も与えないであろう文章を、なぜ書こうとしているのかなんてわかるわけがあ…

痛みで涙を流すとき それはあなたの痛み わたしは涙を見つめる 雫は表現の手段 痛みそのものはあなた あなただけのもの わたしも涙を流す それはわたしの痛み 痛みは伝わったのではない 人の痛みを痛むなど どうしてできるのか! 痛みを表現できるのは 一人…

夜を超えた向こう側にある夜に行こう ねえ ずっと夜だったらいいのにね 朝は嫌い 起きられないんだもの ぴかぴか光るし きっと目にも悪いよ 夜は優しい お月様は眩しくない 雨が降ってきたけど平気 歩こう ねえ この先には朝があるのかしら あの雫だって 大…

嘘を吐く

嘘から出たまこと、という諺があります。嘘を吐いたつもりで話したことが本当に起こった、という状況を表した言葉です。 例えば、有名な狼少年の話があります。退屈しのぎに、狼が来たぞと嘘を吐いて村の人たちを困らせていた少年が、いざ本当に狼がやってき…

同じものを描写する

いつも同じものを見ているのだと思います。それが何なのかはよくわかっていません。知りたい気持ちはあるのですが、理解したいわけではありません。手で触れたり、香りを嗅いだり、味わったり、声を聞いたり、そういうことができればいいのですが、どうも見…

一緒に渡るものは傘を携えている

橋を渡るとき、何かが一緒に渡っています。怖い話ではありません。もっと、比喩的な何かです。或いは、単なる妄想です。一緒に橋を渡る人は、傘を持っています。そして、一緒に橋を渡ります。ただ、それだけです。だからなんなのだと言われると、どうしよう…

灰色の匂い

忘れられないけれど思い出せない。そんな匂いがあります。 良い香りでもあるし悪臭でもあるし、もしくはどちらでもないけど、何となく記憶に染み着いてしまって、記憶と匂いが一緒になっている。つまり、記憶から匂ってくるというか、もう一度嗅いだら「これ…

祈り

私が誰かのために祈るとき 祈りは私のための祈り 誰かが私のために祈るとき 祈りはその人のための祈り 祈るとは何なのか 私は私の世界で生きている それがすべて 他には何もない 手を伸ばして触れることができる 小さな世界 そこで今も生きている 生きること…

紫色の夕焼け、逆さまの椅子

教室掃除。ホームルームの後、机の上に椅子を乗せて、それを後ろに下げてまとめておいて、床を箒で掃いてちりとりでゴミを取り、また机を元の位置に戻す。学校がある限り毎日していました。ゴミを捨てに行くのがまた面倒です。小学校の時はまだ焼却炉なんて…

分かりやすさの破片で指が切れる

一目見て分かる、そういうものが増えている気がします。 「分からない」ことよりも、「分かる」ことの方が良いと思う人が増えたということなのでしょう。僕はそれが良いことだとも悪いことだとも思いません。たとえ分かったつもりであっても、それが切っ掛け…

1冊の本と眼球の裏側について

「今まで読んできた本の中で、1冊だけ人に薦めるとしたら、どんな本を挙げますか?」という質問。こういう時、すぐに答えることが出来ません。状況にもよるでしょうが、こういう質問をすることで質問者が意図していることは「とりあえず、話を続けること」で…

柵の向こう

柵と言うのは危ないところに建てるものです。でも、子供と言うものは危ないところが大好きで、とにかく囲われているところがあったら入りたがるし、自分が囲われたら出ようとします。そもそも、自分のことを考えると、危ないところというのは面白いところで…

土管で体育座りすると時間が遠くなる

小学校の時、校庭に土管がありました。ドラえもんの空き地にあるような石造りのやつで、マリオが入るような鉄製のやつではありません。登って遊べる砂山の遊具を貫通するように置いてあって、直接日光が当たらないからか、いつも中に入るとひんやりとしてい…

蝉に包まれて

あまりにも大きい音に包まれていると、何も聞こえなくなることがあります。目に映るものが多すぎると、何も見えなくなるかどうかはわかりません。経験したことは思い出せますが、想像を思い出すことは出来ません。もう一度想像した方が、自分も面白いと思い…

影とよくわからないもの

大きな影を見た記憶があります。小さい頃、マンションの3階に住んでいたのですが、そのベランダからの光景だったように思います。ベランダの前には長い坂道があって、その日は雨が降っていました。周りは暗くて、僕はぼんやりと坂道を眺めていたと思います…

押入と時間

狭いところが好きでした。学習机の下、押し入れの中、クローゼットの中、屋根裏、空の浴槽に蓋をして入っていたりもしました。暗いところ、影のあるところ、日の当たらないところ、そういう場所に親近感を覚えていたような気がします。 僕自身のことなのに、…

壁に囲まれた縁側

昔、祖父母宅の横に、曾祖父母の住んでいた家がありました 縁側のある古い民家だったと思います その家が僕の記憶によると、地面よりも下に建っていました プリンの容器の底に、家が建っているイメージです もともと家が建っていた周りに土を盛ったのか、 地…

本棚と他人

他人の本棚というのは魅力的です 自分が知らない本が、いっぱい収められている でも、実際他人の本棚を見る機会は多くありません 小さい頃は、押し入れの本棚、叔父の本棚、祖父母宅の本棚、 を見るのがとっても好きでした。 読むことも好きだったのですが、…

書くことと忘れること

長い文章が書けません そもそも、長く考えることが出来ません ぱっと思いついたことは、忘れないうちに書きつけます 物覚えが悪いのかもしれません あるいは、余計なことを考え過ぎているのでしょう 長い文章が書ける人はすごいと思います だから、本が書け…