思い出

灰色の匂い

忘れられないけれど思い出せない。そんな匂いがあります。 良い香りでもあるし悪臭でもあるし、もしくはどちらでもないけど、何となく記憶に染み着いてしまって、記憶と匂いが一緒になっている。つまり、記憶から匂ってくるというか、もう一度嗅いだら「これ…

紫色の夕焼け、逆さまの椅子

教室掃除。ホームルームの後、机の上に椅子を乗せて、それを後ろに下げてまとめておいて、床を箒で掃いてちりとりでゴミを取り、また机を元の位置に戻す。学校がある限り毎日していました。ゴミを捨てに行くのがまた面倒です。小学校の時はまだ焼却炉なんて…

柵の向こう

柵と言うのは危ないところに建てるものです。でも、子供と言うものは危ないところが大好きで、とにかく囲われているところがあったら入りたがるし、自分が囲われたら出ようとします。そもそも、自分のことを考えると、危ないところというのは面白いところで…

土管で体育座りすると時間が遠くなる

小学校の時、校庭に土管がありました。ドラえもんの空き地にあるような石造りのやつで、マリオが入るような鉄製のやつではありません。登って遊べる砂山の遊具を貫通するように置いてあって、直接日光が当たらないからか、いつも中に入るとひんやりとしてい…

蝉に包まれて

あまりにも大きい音に包まれていると、何も聞こえなくなることがあります。目に映るものが多すぎると、何も見えなくなるかどうかはわかりません。経験したことは思い出せますが、想像を思い出すことは出来ません。もう一度想像した方が、自分も面白いと思い…

影とよくわからないもの

大きな影を見た記憶があります。小さい頃、マンションの3階に住んでいたのですが、そのベランダからの光景だったように思います。ベランダの前には長い坂道があって、その日は雨が降っていました。周りは暗くて、僕はぼんやりと坂道を眺めていたと思います…

押入と時間

狭いところが好きでした。学習机の下、押し入れの中、クローゼットの中、屋根裏、空の浴槽に蓋をして入っていたりもしました。暗いところ、影のあるところ、日の当たらないところ、そういう場所に親近感を覚えていたような気がします。 僕自身のことなのに、…

壁に囲まれた縁側

昔、祖父母宅の横に、曾祖父母の住んでいた家がありました 縁側のある古い民家だったと思います その家が僕の記憶によると、地面よりも下に建っていました プリンの容器の底に、家が建っているイメージです もともと家が建っていた周りに土を盛ったのか、 地…