スターエッグ(1)

半年前に始まった体育館横の工事。どうも規模がおかしい。 学校の施設が新しく建設されるらしいが、手当たり次第に聞いて回っても、詳しいことを誰も知らなかった。先生に聞いても一様に首を振る。まさか誰も知らないということはないだろうに。 しかし、世…

イカアイス(終)

一寸先も見えない闇だ。 厨房の奥らしきところから、歯医者のドリルのような、甲高い音が聞こえてくる。 一体何が起きているのだろう。イカのアイスなど最早どうでもよかった。が、それこそ後の祭りだ。退路はすでに断たれている。 「ちょっと、袖をつまんで…

イカアイス(2)

「いらっしゃい!」 薄暗い店内に足を踏み入れると、景気のいい兄ちゃんの声が響いた。 内心びっくりしながら、そっと引き戸を閉める。外から見たら定食屋だったけど、中から見ても定食屋だった。しかも、異様に暗いと思ったら、電気がついていない。店の奥…

イカアイス(1)

何か違和感を感じながら教室の扉を開けると、案の定中は空っぽだった。 移動教室、ではないだろう。時刻は9時。HRはとっくに終わっているが、もしそうなら、移動中の級友とすれ違わないのはおかしい。 「もしかして、今日休みちゃうん。あほくさ。」 運命…

一度も見なかった夢を、私ではない誰かが思い出す

私が一度も見なかった夢を思い出すのは、私ではないのかもしれない。そんな考えが頭をよぎりました。言葉にすると、当たり前のことかもしれません。別に、その誰かは誰だっていいです。人間でもいいし、宇宙人でもいいし、猫でも犬でも鳥でも、石ころでもい…

覚めない夢、どん底としての今

永井均さんという哲学者の本に『私・今・そして神』というものがあります。その中に、夢を思い出すことについて書かれた箇所があるのですが、そこを読んでいて、一度も見ていない夢を思い出すことについて書きたくなったので、少し長くなりますが引用してみ…